『くまのプーさん』生誕100周年 〜レジリエンスのロールモデル、イーヨー ネガティブな感情も大切〜

今年で100周年を迎えるA.A.ミルンの『くまのプーさん』(Winnie-the-Pooh)。前回お話ししたように、この物語に登場するロバのイーヨーの言葉には、物事を冷静に見つめる深い洞察があります。「雨のいちばんいいところはね、いつかは必ずやむってことさ。まあ、いずれはね (“The nicest thing about the rain is that it always stops. Eventually.”) 」、「少しぐらい悪くたって、もっと悪くなることだってあるさ ("Could be worse. Not sure how, but it could be.")」。

 “七転び八起き” 日本の格言にもレジリエンスがちゃんと活きている。

彼の言葉は一見ネガティブですが、実は現実をありのままに受け止める、打たれ強さを秘めています。大人である私達は、普段、「弱音を吐いてはいけない」「前向きでなくてはいけない」と自分を律しがちです。でも、イーヨーは悲しみや自信のなさを隠そうとしません。負の感情を否定せず、自分の心の動きに素直に従う「感情の調整力」は、子どもの自己肯定感を育む重要なプロセスです。

EYFS(イギリスの幼児教育)では、子ども達が逆境を乗り越え、自分の力で立ち直る精神的基盤を「レジリエンス(困難から立ち直る力)」と呼び、重要視しています。「雨は降る」、「悪いことは起こる」という現実をそのまま受け入れるイーヨーの姿は、まさにEYFSが理想とする「レジリエンス」であり、EYFSが掲げる「人的・社会的・情緒的発達(PSED)」の実践例として非常に示唆に富んでいます。

ネガティブな感情も大切な自分の心。否定しなくていい。

さらに注目したいのは、仲間達とイーヨーの関係性です。プーさんやクリストファー・ロビンなど、百町森(100 Acre Wood、100エーカーの森)の仲間達は、イーヨーを無理に「明るくさせよう」と励ましたりはしません。肯定も否定もせず、ただ静かに寄り添い、何かあれば全力で助けようとします。この「ありのままの存在を見守る」というテーマは、EYFSが掲げる「前向きな関係(Positive Relationships)」そのものです。そばにいる保育士が子どもを「ユニーク・チャイルド(A Unique Child)」として尊重し、その感情を否定せずに受け止める「適切な環境(Enabling Environments)」があることで、子どもは「どんな自分であっても居場所がある」という絶対的な安心感を得ることができるのです。

「雨はいずれやむ」ということを知っているイーヨーの心は、逆境を乗り越えるレジリエンスの象徴です。私達大人がその感情を受け止め、困った時には一緒にしっぽを探してあげる(みなさんご存知の様に、すぐに尻尾が取れてしまうのがイーヨーの悩みのタネです)。その安心感こそが、子ども達の自信を育む一番の支えとなるのです。

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