なぜオリンピックでは「イングランド」ではなく、「イギリス(Team GB)」?「みんな違っていい」4つの地域が、いざという時に見せる連帯
サッカーのW杯では4つの地域に分かれて戦うイギリスですが、オリンピックでは「Team GB」という一つのチームとして、国旗「ユニオンジャック」を背負って戦います。この違いは、オリンピックが始まった時期に理由があるのです。
現在のイギリス(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)は、イングランド、スコットランド、ウェールズ、そして北アイルランドという4つの地域からなっていることは、前回お話しましたね。(詳しくはコチラから)W杯とは異なり、1896年に近代オリンピックが始まったときにはすでに、国際舞台では「4つまとまって一つの国家」として承認されていたため、オリンピックには連合王国イギリス(のちのTeam GB)として参加することになりました。
そして、普段は分かれて戦う4つの地域が一つになる瞬間は、オリンピックだけではありません。W杯ではサッカーのように地域ごとの代表に分かれて戦うラグビーの世界では、4年に一度「ブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・ライオンズ」という特別なドリームチームが結成され、イングランド、スコットランド、ウェールズ、そしてアイルランド(南北合同)の選手たちが一つのチームとして結束し、世界に挑みます。
イギリスの国旗 「ユニオン・ジャック」 は、イングランド、スコットランド、アイルランドの3つの国旗が重なっているデザインなのです。
ではスポーツの世界から離れて、教育の世界を見てみましょう。イギリスの教育の仕組みは4つの地域ごとに違い、それぞれに特徴があります。たとえば、 ウェールズでは、子ども達の文化的アイデンティティを守るため、16歳までウェールズ語の学習を義務化しています。 スコットランドでは、地元の学生は大学の授業料が無料なのに対して、イングランドは一律年間で約1万ポンドの授業料がかかります。(ちなみに、イギリスの大学はほとんどが公立です。)
とは言え、地域によって表現や仕組みは違っても、その根底にあるのは、 イングランドの幼児教育 (EYFS )が掲げる「A Unique Child(ユニークな子ども)」という言葉に代表される精神です。「みんな違っていい、一人ひとりが特別である」というこの視点は、4つの地域すべてに共通する教育の土台です。 「みんな違っていい」というのは自分勝手に振舞っていい、ということではありません。言い換えるとそれは「自分を大切にするように、他者を思いやる・敬う」という相互理解に通じることなのです。
4つの地域に分かれていることもあれば、オリンピックやライオンズのようにライバル同士が垣根を越えて仲間となり、その多様性を武器に変えて団結することもある。ここに、イギリス、そしてこのアイルランド島周辺の地域ならではの魅力と頼もしさがあるんですね。