シリーズ【イギリスの幼児教育】 学習障害とイギリスの実態
Learning Disabilitiesという言葉が使われるようになったのは、1963年に当時アメリカのResearch on Exceptional Children研究所の所長を務め、その後に「特別支援教育の父」と呼ばれるようになったアメリカ人精神分析医のサミュエル・A・カーク教授の発案によるものです。
彼は、シカゴで行われた教育関連のカンファレンスで、言語、発語、読解、および対人関係に必要なコミュニケーション能力の発達に障害を持つ子どもたちのグループを「学習障害」と表現し、そのグループには、視覚や聴覚などの感覚機能の障害や精神障害を持つ子どもたちは含まれないと定義しています。
学習障害にはさまざまな種類がありますが、その代表的なものに、読み書きに困難が見られる読字障害(ディスレクシア)、文字や文を書くことに困難がある書字障害(ディスグラフィア)、計算や推論することに困難が見られる算数障害(ディスカリキュラ)などが挙げられます。特にこれらは、最近ではSLD:Specific Learning Disorder(限局性学習症)と呼ばれるようになっています。
学習障害の症状や程度は一人ひとり異なり、幼少期に明らかになるのは重度のケースが多く、大人になってから初めて診断されることも珍しくありません。
では、イギリスにおける学習障害の実態はどうなっているのでしょう。現在、イギリスでは0~17歳の子どものうち約2.5%にあたる286,000人が学習障害を持っていると推定されています(男子180,000人、女子106,000人)。この数字からもわかるように、学習障害のある子どもの割合は男子が女子よりも多い傾向にあります。
学習障害の中でも、イギリスで最も多く見られるケースは、文字の読み書きや理解に困難を伴う読字障害(ディスレクシア)です。British Dyslexia Association(BDA)によると、イギリスでは10人に1人の約670万人がディスレクシアの特性を持っていると推定されています。しかしながら、その多くは自覚がなく、特に学校に通う若者の約80%が、学校内でディスレクシアの診断がなされていないのが現状です。
こういったことからも、子どもが1日の大半を過ごす保育施設や学校は、学習障害の早期発見につなげたり、診断後に適格なサポートを提供する上で、重要な役目を担っているのです。
また、誰もが分け隔てなく受け入れられるインクルーシブな教育の実践を目指すイギリスでは、学習障害のある子どもも、できる限り通常の教育機関に通うことが奨励されています。
そのために、保育施設や学校には、前回のブログでも紹介したように、学習障害や障害を持つ子どもを担当するSENDCO(特別教育支援と障害のコーディネーター)の設置や、特定の年齢で行われる発達のアセスメント、親や専門家を交えた協働などが、ガイドラインで義務付けられているのです。
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