シリーズ【イギリスの幼児教育】 〜イギリスの子どもたちに必要な支援の今 その2〜 イギリスのSEND(特別支援教育と障害)制度

前回のブログで紹介した発達障害。イギリスでは、こうした発達障害を含む「特別な支援が必要な子どもや若者」を対象に、Special Educational Needs and Disabilities、略してSENDという制度が適用されています。保育施設や学校はSENDのある子どもたちが、できるだけ他の子どもと同様の保育や教育が受けられるように、法的なガイドラインに沿って支援を提供しています。

SENDに関する支援は、SEN Code of Practice 2015(特別支援教育に関する実践規範2015)という法定ガイダンスに基づいて行われます。それには、保育施設や学校でSENDの支援を専門的に担当するSENDCO (特別支援教育と障害のコーディネーター) の配置があります。これは、特別支援に関する専門研修を受けた有資格の保育士や教師が担う役割で、SENDの子どもたちに必要な支援を総合的に監督するだけでなく、保護者との連携や相談対応、医療や福祉など外部の専門機関との調整など、まさに施設内外をつなぐ橋渡し的な存在です。

更に、EHCプランという一人ひとりの子どものニーズに沿った個別支援計画の作成があります。これは、SENDのある0-25歳の子どもと若者を対象に、教育・医療・福祉(Education・Health・Care)の各分野の専門家が連携して支援内容を決めていく包括的なプランで、地方自治体によって作成されます。そのプランには、子どもの具体的なニーズ、必要な教育的支援内容、目指す成果(ゴール設定)、通う学校の指定などが含まれ、これによって、専門家による指導やセラピー、特別な設備の利用や補助金の申請などが可能になります。

2025年1月時点で、イギリスではこのEHCプランを63万人以上の子どもと若者が利用しています。その数は前年よりも10.8%増加し、2014年にこの制度が開始されて以来、右肩上がりです。このように、ますますその必要性が高まる中、昨年申請されたEHCプランの半数以上が、法定で定められた期限内に発行されなかったなど、手続きの遅れが問題視されています。「専門家の事務手続きにかかる負担が増える一方で、本来子どもに必要なサポートの提供が後回しになっていないか?」とそのシステム自体を疑問視する声が上がっています。

この問題を受けて、イギリス政府では現在、EHCプランを含めたSEND制度の見直しが進められているところです。

次回のブログでは、発達障害の1つとして含まれている学習障害について詳しく紹介します。

Next
Next

シリーズ【イギリスの幼児教育】 〜イギリスの子どもたちに必要な支援の今 その1〜 発達障害とは?